歴史小説ファンならずとも、好きな作家のひとりにあげるのが司馬遼太郎ではないでしょうか。会社経営者への愛読書アンケートでも氏の「坂の上の雲」が必ず上位を占めます。小生も司馬ファンのひとりとしていつか訪れたい、その思いが実現したのが今年の晩秋のこと。
東大阪市の住宅街にあるかつての自宅の正門を入る。雑木林を思わせるような庭園が来場者を迎えてくれます。思わず「いいなあ」と嘆息、そして氏がずっと原稿用紙にむかった書斎。「ここで、司馬作品が生まれたのか」とガラス窓越しに室内を凝視する。日当たりのよい広いスペースに書斎机、そして執筆中に用意したであろう図書、資料、小道具の数々。
そしてかつての自宅に隣接した、安藤忠雄設計の記念館です。ここで驚くのは何といっても大書架。高さ11㍍の壁面いっぱいに図書が整然と並んでいます。とにかく資料を片っ端から集め、速読の名人だったようです。神田の古本屋、地方の古本屋にいくと「この書架のものをすべて購入します」というような買い方をしたというエピソードも残っています。図書の類はこの記念館に2万冊、自宅に6万冊といいますからとにかくすごい。
氏は大阪市生まれ。大阪外大でモンゴル語を専攻し、後に産経新聞の記者に。そして歴史小説を執筆し「梟の城」で直木賞を授賞。その後、膨大な量の作品を世に残したことは説明するまでもありません。小生が司馬作品で最近読んだのは家康を題材にした「覇王の家」。記念館を来訪した感激から、司馬作品それからみどり夫人が書いた「司馬さんは夢の中」などを購入。相当な量になったので宅配便で送ってもらうことにしました。
司馬遼太郎の命日が2月12日(平成8年)、この日を「菜の花忌」といっています。氏は野に咲く花、それも菜の花が好きだったということから、庭にも菜の花が植えられていました。司馬作品はこれまで、NHKの大河ドラマで数々取り上げられてきましたが、「坂の上の雲」がいよいよ映像化されるということで、これは必見ですぞ、はい。